
七日市藩和蘭薬記 たなか踏基(著)2008年10月発行
江戸時代に「七日市藩」という藩が存在したことも知らず、
七日市藩が加賀藩からの立藩だったことも知らず、
その藩が、加賀近郊ではなく、西上州一万石だったことも知らなかった。
知らないことだらけの事実を土台にして、あれよあれよと言うまに
話はどんどんすすんでいく・・・そんな想いで読みました。
歴史的資料がふんだんに登場するので、ついノンフィクションかと勘違い
してしまいそうですが、あくまでも作者の創作だそうだ。
話は、江戸後期、薬草調合の秘密を守るために命をかけた「一之丞」と
生涯彼を守る友「権乃進」を主軸として、京都の南蛮商「海老屋」、
碧眼の美女「お筆」、和蘭通詞「市五郎」、そして一之丞の息子「一馬」等
が、加賀藩、公儀隠密との闇の闘いに巻き込まれながらも、必死に生きた姿
を、時代背景とともに描かれている。
一之丞親子の生い立ちと、七日市藩の謎、市五郎の死後、中之条と甘楽郡界隈
に何故薬師や医者が多く輩出したのか、という謎に応える形で創作したと
作者あとがきにある。
また、サブテーマとして「父子の確執」や、隠れ切支丹の受難を描いたとも
ある。
綿密な調査、膨大な量の資料を元に書かれたこの作品は、小説であり、
作者の言わんとすることも充分感じられるのですが、
ある意味、貴重な江戸時代の歴史資料を読ませてもらった気分の方が
強く印象に残りました。
次は、『奇妙な羽衣伝説』(作者の前作)を読んでみたいと思います。
わがまま母